2024年6月、帝人株式会社は再び大きな決断を下しました。同社とその医薬品部門である帝人ファーマの正社員を対象とした早期退職制度「ネクストキャリア支援制度」の開始です。この制度は、新たな中期経営計画に基づく固定費削減の一環として、勤続10年以上の正社員を対象に、150人の募集を予定しています。2024年9月末までに退職を完了するという厳しいスケジュールが設定されており、希望者には再就職支援サービスも提供されるとのことです。
過去のリストラ
過去のリストラの背景
帝人が過去に行ってきたリストラの背景には、業績低迷や市場環境の変化が大きく影響しています。特に2020年以降、新型コロナウイルスのパンデミックが世界的に広がり、企業経営に多大な影響を及ぼしました。帝人も例外ではなく、医薬・ヘルスケア事業に注力する一方で、コスト削減を図るための組織再編と事業ポートフォリオの見直しを進めました。
2023年には、収益改善を目指して300億円以上の改善計画を発表し、複合成形材料分野での投資絞り込みや低採算プログラムの撤退、さらには事業売却の検討などを行いました。また、アラミド事業では工場火災からの早期回復と生産安定化を図り、ヘルスケア分野では在宅医療機器事業基盤の希少疾患・難病領域への展開と固定費削減を実行しました。
帝人グループ 中期経営計画 2024-2025
帝人の中期経営計画2024-2025の要点
帝人株式会社は、2024-2025年に向けた中期経営計画を発表しました。この計画は、事業ポートフォリオの変革を早期に完遂し、成長軌道に回帰するための重要なステップとして位置付けられています。以下に、計画の要点を整理します。
事業ポートフォリオの再構築
帝人は、収益性の高い事業にリソースを集中し、低収益事業からの撤退や売却を進める方針です。これにより、資源を効率的に配分し、収益性を高めることを目指しています。
固定費の削減
固定費削減を通じて、収益性の向上を図ります。具体的には、組織のフラット化や管理コストの削減、効率的な業務プロセスの導入が含まれます。執行役員の数を減らし、各事業本部をCEO直轄とすることで、迅速な意思決定と効率的な運営を実現します。
グローバル経営基盤の強化
帝人は、グローバル市場での競争力を強化するため、経営基盤の強化に取り組みます。これには、国際展開の拡大や海外拠点の強化、グローバル人材の育成が含まれます。また、サプライチェーンの強化やデジタルトランスフォーメーションの推進も重要な要素です。
ヘルスケア事業の強化
ヘルスケア分野では、在宅医療機器の事業基盤を希少疾患・難病領域に拡大し、新たな市場を開拓することを目指しています。これにより、帝人はヘルスケア事業の収益性と成長性を高める計画です。
サステナビリティとESG対応
環境・社会・ガバナンス（ESG）の取り組みを強化し、サステナビリティを重視した経営を推進します。気候変動対策や循環型経済の実現、人権尊重や腐敗防止など、社会的責任を果たすための施策が含まれます。
技術革新と新製品開発
技術革新を通じて、新製品の開発と市場投入を加速します。特に、高機能材料や先端医療技術などの分野での研究開発を強化し、競争優位性を確立することを目指しています。
総括
帝人の中期経営計画2024-2025は、収益性の向上と成長軌道への回帰を目指した包括的な戦略です。事業ポートフォリオの再構築、固定費の削減、グローバル経営基盤の強化、ヘルスケア事業の強化、サステナビリティとESG対応、そして技術革新と新製品開発が主要な柱となっています。この計画を通じて、帝人は競争力を維持し、持続的な成長を実現することを目指しています。
経営体制の変革と固定費削減
帝人は、経営体制の変革にも着手しています。2023年には、現行30人の執行役員・理事を15人体制に移行し、マテリアルとヘルスケアの事業統括制を廃止して各事業本部をCEO直轄とするフラットな組織に再編しました。このような変革は、迅速な意思決定と効率的な経営を実現するための重要なステップです。中期経営計画には、本社スタッフの配置・規模の最適化について記載され、2025年度固定費削減目標：40億円となっています。
新中期経営計画の目的
今回の早期退職制度は、新中期経営計画の一環として位置付けられています。この計画では、固定費の削減を通じて収益性を向上させることが目標とされています。具体的には、コスト構造の見直しや業務の効率化が図られ、同時に新たな成長分野への投資も検討されています。
中期経営計画 2024-2025年度 施策(固定費削減）
国内での「ネクストキャリア支援制度(早期退職優遇制度：150人)」を含む固定費削減目標の確実な達成
リストラの影響と今後の展望
リストラは、企業にとって経営改善のための重要な手段である一方、従業員にとっては不安と不満をもたらすものであり、慎重に進める必要があります。帝人は、再就職支援サービスを提供することで、退職者の新しいキャリアを支援しようとしていますが、従業員のモラルや会社全体の雰囲気に与える影響も無視できません。
帝人の未来
今後の帝人は、今回のリストラを通じて得られたコスト削減効果を活かし、新たな成長戦略を推進することが求められます。特に、ヘルスケア分野での技術革新や新製品の開発、国際展開の強化などが重要なテーマとなるでしょう。また、サステナビリティへの取り組みやESG（環境・社会・ガバナンス）対応も、企業としての信頼性を高めるために必要不可欠です。
総括
帝人の早期退職募集と過去のリストラは、企業が直面する厳しい現実と、将来的な成長を見据えた戦略的決定の一環です。市場環境の変化や技術革新のスピードが増す中、企業が競争力を維持し、持続的な成長を遂げるためには、時に厳しい決断が必要となります。帝人がこのリストラを乗り越え、どのように次のステージに進化していくのか、その動向から目が離せません。
帝人グループ中期経営計画2024-2025
https://www.teijin.co.jp/ir/management/vision/pdf/plan_pm_240513.pdf
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