医薬情報担当者(MR)の数が大幅に減少していることが最新の調査結果から明らかになりました。ミクスOnlineが発表した2024年版のMR数調査によると、MR数は前年に比べて6.7%減少し、これはこれまでで最も高い減少率です。この変化の背後には、早期退職や補充不足、組織再編、そしてデジタル化の進展が影響しています。この記事では、具体的な企業名や人数、リストラの内容を含めて、MR数減少の現状と今後の展望について詳しく探ります。
MR数減少の背景
早期退職と補充不足
MR数が減少した主要な要因の一つは、早期退職の増加です。例えば、大手製薬企業の武田薬品工業は、コスト削減の一環として早期退職制度を導入しました。これにより、経験豊富なMRが退職し、その結果として1700人以上のMRが業界を去りました。補充が十分に行われていない理由としては、新しい人材の採用が進まないことが挙げられます。特に若年層の間でMRという職業の魅力が低下していることや、企業が人件費を削減するために新規採用を控えていることが背景にあります。
■MRを100人以上減らした企業(5社)
・アステラス製薬(400人減)
・塩野義製薬(170人減)
・中外製薬(130人減)
・協和キリンと第一三共(各100人減)
※減少数の上位3社はいずれも早期退職者を募集した
■50~99人減(4社)
・小野薬品(99人減)
・興和(87人減)
・参天製薬(80人減)
・グラクソ・スミスクライン(50人減)
組織再編とデジタル化の進展
COVID-19パンデミック以降、多くの企業が組織再編を進めており、その一環としてMR部門の縮小が行われています。大手企業の中外製薬やエーザイも組織再編を実施し、効率化を図るためにMR部門の統合や再編を進めています。その結果、MR数が大幅に減少しています。また、デジタル化の進展もMR数減少の一因となっています。リモートワークやオンラインでの情報提供が普及したことで、従来の対面での情報提供が減少し、MRの需要が減少しています。
新しい情報提供スタイルへのシフト
リモートワークとオンラインミーティング
パンデミックを契機に、製薬業界ではリモートワークやオンラインミーティングが急速に普及しました。MRは従来、医療機関を訪問して直接情報を提供していましたが、現在ではオンラインでの情報提供が主流となっています。例えば、アステラス製薬はリモートワークを導入し、オンラインでの情報提供を推進しています。この変化は、MRの働き方だけでなく、情報提供の質や効率にも影響を与えています。オンラインミーティングは、移動時間を削減し、効率的に情報を提供できる一方で、対面でのコミュニケーションが減少することで、人間関係の構築が難しくなるという課題もあります。
デジタルツールの活用
デジタルツールの活用も進んでいます。電子メールやチャットツール、ウェビナーなどを利用して、迅速かつ効果的に情報を提供することが可能となりました。例えば、グラクソ・スミスクライン(GSK)は、デジタルツールを活用した情報提供を積極的に進めています。また、医療従事者は必要な情報をいつでもどこでも入手できるようになり、MRの役割が変化しています。これに伴い、MRにはデジタルツールを活用するスキルが求められるようになっています。
MRの役割の変化と今後の展望
情報提供者からコンサルタントへ
従来、MRは主に製品情報の提供を行っていましたが、今後はコンサルタントとしての役割が求められるようになると考えられています。医療従事者にとって、単なる情報提供だけでなく、臨床現場での問題解決や治療方針のアドバイスなど、より高度なサポートが求められるようになっています。MRは製品知識だけでなく、臨床知識やコミュニケーションスキルを高める必要があります。例えば、武田薬品工業では、MRに対する高度なトレーニングプログラムを導入し、コンサルタントとしてのスキルを育成しています。
継続的な学習とスキルアップ
MRは常に最新の情報を提供するために、継続的な学習が必要です。特に、医療技術や製品の進歩が著しい現代においては、最新の知識を持っていることが重要です。また、デジタルツールの活用やオンラインコミュニケーションのスキルも求められています。企業はMRのスキルアップを支援するために、研修やトレーニングプログラムを充実させる必要があります。例えば、エーザイでは、MRに対して定期的なオンライン研修を実施し、最新の知識とスキルを提供しています。
多様な働き方の提供
MRの働き方も多様化しています。リモートワークやフレックスタイム制の導入により、柔軟な働き方が可能となっています。これにより、ワークライフバランスを保ちながら働くことができ、MRの仕事に対する満足度も向上しています。企業は、働きやすい環境を整えることで、優秀な人材を確保することができます。例えば、中外製薬は、リモートワークを積極的に導入し、従業員の働きやすさを向上させています。
まとめ
2024年版のMR数調査は、MR数の減少が加速している現状を明らかにしました。早期退職や補充不足、組織再編、デジタル化の進展などがその背景にあります。しかし、これらの変化は新しい情報提供スタイルへのシフトを促進し、MRの役割にも変化をもたらしています。今後は、情報提供者としてだけでなく、コンサルタントとしての役割が求められ、MRには高度な知識とスキルが必要となります。企業はMRのスキルアップや働き方の多様化を支援し、柔軟な働き方を提供することで、優秀な人材を確保することが求められます。製薬業界全体として、これらの変化に対応し、MRの新しい役割を確立していくことが重要です。
以上の内容から、MR数の減少は単なる数値の減少にとどまらず、製薬業界全体の変革を象徴しています。今後もMRの役割や働き方は進化し続けることでしょう。製薬企業は、この変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現するための戦略を策定していくことが求められます。
ミクスMR数調査24年版 MR数6.7%減、減少率最も高く ニューノーマルな情報提供・収集スタイルへ
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