2024年5月13日に開催された杏林製薬の2024年3月期通期決算説明会では、同社の財務成績と将来戦略が詳細にわたって発表されました。
希望退職プログラムによる特別損失約10億円の計上などの影響を吸収しました。
決算のハイライト
杏林製薬の2024年3月期の決算は、以下のような成績を示しました:
- 売上は前年度比5.5%増の1195億円
- 営業利益は17.4%増の60億円
- 親会社帰属純利益は12.7%増の53億円
増収増益だった。新薬5製品を中心に増収を達成。23年4月の薬価改定による7%台の改定影響や、原価率の上昇、希望退職プログラムによる特別損失約10億円の計上などの影響を吸収しました。
これらの数字は、同社が安定した成長を続けていることを示しており、新薬の販売増加が大きく貢献しています。
MRの早期退職プログラム
経営効率化の一環として、杏林製薬は2023 年 11 月 1 日よりMRの早期退職プログラムを実施しました。このプログラムは、50歳以上のMRを対象に実施され、特別加算金の支給や再就職支援サービスが提供されます。この動きは、デジタル化の進展とMRの役割の変化に対応するためのものです。
希望退職プログラムはMRなどを除く50歳以上の社員と55歳以上の管理職を対象に23年11月に実施。65人が応募・退職しました。
希望退職プログラムによる特別損失約10億円の計上しています。
実施理由は、医療財政逼迫に伴う医療費・薬剤費抑制策の推進、新薬創出の高度化・難易度上昇など厳しさを増し、医薬品業界はこれまでにない変革期を迎えていることがあげられています。
希望退職プログラムの概要
(1)対象者 下記(i)または(ii)に該当する杏林製薬の社員(医薬情報担当者(MR)などを除く)
(i) 2023 年 10 月 1 日現在、年齢 50 歳以上 65 歳未満かつ勤続年数 5 年以上の一般社員、及び定年後再雇用社員
(ii)2023 年 10 月 1 日現在、年齢 55 歳以上かつ勤続年数 5 年以上の管理職
(2)募集人数 特に定めない
(3)募集期間 2023 年 11 月 1 日から 2023 年 11 月 30 日
(4)退職日 2024 年 1 月 31 日(予定)
(5)支援内容
・所定の退職金に加えた特別加算金の支給
・希望者に対する再就職支援サービスの提供
希望退職プログラムの実施について
https://www.kyorin-pharm.co.jp/news/2023/001734.shtml
新薬開発の進捗
杏林製薬は、新薬開発において重要な進展を遂げています。開発中の新薬候補は、肺疾患や過活動膀胱など、さまざまな治療領域において期待されており、特に間質性肺疾患治療薬KRP-R120は注目を集めています。同社は、新薬開発とデジタル技術の活用による医薬品販売の効率化を進め、国内外での事業拡大を図っています。
杏林製薬は、疾患研究から見出された有望な創薬ターゲットと最新の創薬技術を組み合わせ、新たな価値を創出する創薬イノベーションに取り組んでいます。2024年5月10日現在の開発パイプラインは、様々な段階の新薬候補を含んでおり、その中には臨床試験の最終段階にあるものもあります。
開発パイプラインのハイライト
- KRP-R120:間質性肺疾患(肺サルコイドーシス)治療薬として開発中のKRP-R120は、融合タンパク製剤であり、Neuropilin-2 受容体 (NRP2)に結合することで免疫細胞の活性化を抑制する作用を有しています。この薬剤は、ファースト・イン・クラスの治療薬として期待されています。
- KRP-114VP:過活動膀胱の治療薬として、小児への適応拡大を目指しています。
- KRP-A218:宿主分子を標的とし、体内でのウイルス増殖を抑制する新しい抗ウイルス薬です。
開発段階 | 製品名・開発コード 薬効 | 起源 | 特徴 |
PhⅢ(22年9月) | KRP-R120 / 間質性肺疾患 (肺サルコイドーシス) | atyr社 (エイタイヤ―) | 融合タンパク製剤であり、Neuropilin-2 受容体(NRP2)に結合することで過剰な免疫細胞の活性化を抑制する作用を有し、ファースト・イン・クラスの治療薬として肺サルコイドーシス等の炎症疾患への効果が期待される |
経営戦略と今後の展望
杏林製薬は、新薬開発において重要な進展を遂げています。開発中の新薬候補は、肺疾患や過活動膀胱など、さまざまな治療領域において期待されており、特に間質性肺疾患治療薬KRP-R120は注目を集めています。同社は、新薬開発とデジタル技術の活用による医薬品販売の効率化を進め、国内外での事業拡大を図っています。
荻原豊代表取締役社長は5月13日、2023年度(24年3月期)決算説明会に臨み、医療用医薬品売上に占める新薬比率を“2025年度に50%以上”にする目標について、「24年度に51.0%になると予想している。1年前倒しで達成する見込み」と述べられています。
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