はじめに
資生堂は、2024年3月に大規模なリストラ計画を発表しました。この計画は、日本国内での事業の効率化と、グローバル市場での競争力強化を目的としています。一方で、製薬業界は、新薬開発やパーソナルケア製品の市場拡大に向けて、研究開発に注力しています。この記事では、資生堂のリストラ計画が製薬業界に与える影響と、その逆の関係性について考察します。
資生堂のリストラ計画の詳細とその影響
資生堂が発表したリストラ計画は、企業の歴史の中でも特に大規模なものです。この計画は、1500人の社員に早期退職を募集することを含んでおり、資生堂ジャパンに所属する社員の約1割に相当します。対象となるのは、45歳以上で勤続20年以上の社員です。この動きは、固定費の削減と経営基盤の強化を目的としています。
早期退職募集の背景
資生堂のリストラ計画は、コロナ禍によるインバウンド需要の減少と、パーソナルケア事業の売却による収益の影響を受けています。特に、2021年7月には「TSUBAKI」や「uno」などのブランドを売却し、日本事業の収益が大きく影響を受けました。
ミライシフト NIPPON 2025の3つの柱
資生堂は、今後の構造改革により、270億円の費用を見込んでおり、そのうち早期退職に関連する特別加算金が190億円を占めるとされています。これらの改革を通じて、2025年度までに250億円の収益改善効果を見込んでおり、日本事業のコア営業利益を500億円に回復させることを目指しています。
持続的な成長/稼げる基盤構築
資生堂は、成長性と収益性が高いブランドや商品、接点に活動を集中し、ブランド戦略とタッチポイント戦略を強化します。技術と研究開発力を活用して、愛されるブランドや商品の導入を加速し、新しいカテゴリーを創造します。
高収益基盤への転換を目指し、原価、マーケティング投資、経費の効率化を進め、2年間で250億円の削減を見込んでいます。
人財変革「ミライキャリアプラン」
自己革新を続ける人財・組織を早期に確立するため、社員一人ひとりのキャリアを支援するプランを展開します。これには、変革を共に進める社員への能力獲得とリスキリングへの投資、社外で新たなキャリアを目指す社員への早期退職支援プランが含まれます。
製薬業界の動向:新興国の市場拡大と先進国の医療費抑制
新興国市場の拡大
新興国では、経済成長に伴い医療へのアクセスが向上し、医薬品市場が拡大しています。特に、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々では、人口増加と中間所得層の拡大が医薬品需要を牽引しています。
先進国の医療費抑制
一方、先進国では高齢化の進展により医療費が増大しており、政府は医療費抑制のための様々な策を講じています。日本では、後発医薬品への切り替えや薬価制度の見直しが進められており、製薬会社にとっては収益を圧迫する要因となっています。
日本の製薬業界の現状
日本の製薬業界は、薬価改定による価格引き下げで縮小傾向にあります。新薬企業は、特許が切れ始めた主力薬の利益率が低下しており、新薬も薬価低下により収益を上げるのが難しい状況です。後発薬企業も開発コストは低いものの、価格が新薬の半分以下になるため、薬価抑制策は企業の利益に大きな影響を与えています。
資生堂と製薬企業の関連性:新たなビューティー&ウェルネスの地平
資生堂は、美容と健康を融合させた新たなビジネスモデルを構築しています。これは、化粧品業界と製薬業界の境界を曖昧にし、両者のシナジーを高める動きと言えます。
資生堂のビジネス戦略
資生堂は、2024年1月1日を効力発生日として、資生堂ジャパン株式会社に資生堂薬品株式会社の薬品事業を承継する会社分割を行いました。これにより、クリーン&ダーマ領域およびインナービューティー領域への取り組みが強化され、新たな需要と体験価値の創造が期待されています。
製薬企業との連携/事業承継
資生堂は、カゴメやツムラといった企業と連携し、食事などで体の内部から美容効果を得る「インナービューティー」の新ブランドを立ち上げました。これは、製薬企業が持つ健康に関する専門知識と資生堂の美容技術が融合した事例です。
資生堂薬品の事業承継は、資生堂が化粧品だけでなく、医薬品やヘルスケア製品にも注力していることを示しています。この動きは、製薬企業との関連性を深め、新たな市場領域を開拓する基盤を築いています。
製薬企業とのシナジーの可能性
資生堂のこのような戦略は、製薬企業とのさらなる協業の可能性を示唆しています。例えば、資生堂が開発したスキンケア製品に製薬企業が開発した有効成分を組み合わせることで、より効果的な製品が生まれるかもしれません。
資生堂のリストラ計画とその波紋
資生堂のリストラ計画は、日本のビジネス界における大きな話題となりました。この計画は、企業文化の変革と市場ニーズへの迅速な対応を目的としています。ここでは、その具体的な事例と影響について掘り下げてみましょう。
資生堂のリストラ計画の背景
資生堂は、中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を通じて、日本事業で500億円を超えるコア営業利益の実現を目指しています。この計画の一環として、1500人の早期退職募集が行われました。これは、資生堂ジャパンに所属する社員の約1割に相当し、45歳以上かつ勤続20年以上の社員が対象となりました。
改革の3つの柱
資生堂の改革は、「Profitable Growth(収益性の高い成長)への事業構造転換」「固定費の合理化」「組織風土改革」という3つの柱に基づいています。これらの柱は、消費者起点のビジネスモデルの確立、効率性の追求、そしてスピーディな商品開発を目指しています。
資生堂ジャパンの取り組み
資生堂ジャパンでは、EC売り上げ比率を22年の10%台後半から25年までに30%へと伸ばす目標を掲げています。また、店頭人材の配置の適正化やデジタルを活用したエンゲージメントの高め方など、新たな取り組みが進められています。
影響:組織風土の変革
資生堂のリストラ計画は、組織風土の変革にも大きな影響を与えています。トップダウンの意思決定を強化し、タブーを排除することで、自己革新が起きる組織風土を目指しています。これにより、新しいポジティブサイクルが生まれることが期待されています。
まとめ
資生堂のリストラ計画は、企業の持続可能な成長と効率化を目指す大胆な一歩です。この計画は、従業員の早期退職募集、事業構造の転換、そして組織風土の改革を含んでいます。製薬業界との関連性を深めることで、資生堂は新たなビューティー&ウェルネス市場を切り開く可能性を秘めています。この変革は、資生堂だけでなく、関連する業界にも大きな影響を与えることでしょう。最終的に、資生堂のリストラ計画は、企業が直面する挑戦に対応し、新しい時代のニーズに合わせて進化するための戦略的な取り組みと言えます。
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