製薬業界のリストラの実態
こんにちは、この度は私のブログをご覧いただきありがとうございます。私は製薬業界に長年携わってきた元MRで、現在はブロガーとして活動しています。今回は、製薬業界に迫る「コロナリストラ地獄」について、私の見解と対策をお伝えしたいと思います。
MRとは、医薬情報担当者の略で、製薬会社の営業部隊です。MRは医療現場に自社の医薬品の情報を提供し、医師や薬剤師との信頼関係を築くことで、医療用医薬品の普及と適正な使用を促進する仕事をしています。MRは高い専門性とコミュニケーション能力を求められる職種で、高収入と安定性が魅力とされてきました。
しかし、近年、製薬業界は大きな変化に直面しています。新薬の開発が難しくなり、薬価の引き下げやジェネリック医薬品の普及によって利益が減少しています。また、コロナ禍によってMRの病院訪問が制限され、リモートでの情報提供が主流になりつつあります。これらの要因により、製薬会社はMRの人員削減や組織改革を進めており、MRのリストラは深刻な問題となっています。
では、具体的にどのようなリストラが行われているのでしょうか?以下に、2020年から2023年までに発表された主な製薬会社の早期退職募集の動向をまとめてみました。
企業名 | 早期退職人数 | 実施年 | 退職月 | 条件 | 備考 |
参天製薬 | 非公開 | 2023 | 12月末 | 2023年12月31日時点で50歳以上かつ勤続年数3年以上の社員・定年後再雇用社員※但し一部適用除外部署の設定あり | 割り増し有 |
アステラス製薬 | 非公開 | 2023 | 2024/3末 | 24年3月末で満5年以上の国内営業に従事している社員 | 割り増し有 |
大正HD | 非公開 | 2023 | 非公開 | 非公開 | |
塩野義製薬 | 約200人 | 2023 | 10月末 | 2024年3月31日時点で50歳以上かつ勤続年数5年以上の社員(一部の幹部職などは除く) | |
ブリストル | 非公開 | 2023 | 6月末 | 6月30日時点で48歳以上かつ勤続年数3年以上の営業部門に所属する社員(本社勤務含む) | |
アムジェン | 非公開 | 2023 | 6月末 | 営業組織のうち骨粗鬆症治療薬「イベニティ」を扱うスペシャリティケア事業本部 | |
バイエル | 約500名 (管理職100名、一般職400名) | 2023 | 10月末 | 35歳から65歳までの医療用医薬品部門(なお合否あり) | 割り増し退職金 0.6年~3.5年分 |
中外製薬 | 約370名 | 2023 | 6月末 | 23年12月末時点で満40歳以上の正社員およびシニア社員。 | |
ヤンセンファーマ | 非公開 | 2022 | 12月末 | 非公開 | ポジションクローズ 割り増しなし |
ファイザー | 約470人 | 2022 | 12月末 | 35歳以上の営業部門に所属する社員(35歳~64歳) | 割り増し退職金 最大4.5年分 |
大幸薬品 | 約30名 | 2022 | 7月末 | 40歳以上59歳未満の正社員と無期雇用社員 | |
ノバルティス | 人数制限を設けない | 2021 | 7月末 | 勤続5年以上の全営業・マーケティング・メディカル部門の社員 (年齢制限なし) | |
ヴィアトリス | 約500人 | 2021 | 6月末 | コマーシャル部門(営業部門)に所属する全社員 | |
アステラス製薬 | 約650人 | 2021 | 9月末 | 2021年9月30日時点で45歳以上かつ勤続年数5年以上の社員 (一部の幹部職などは除く) | |
アストラゼネカ | 50名 | 2021 | 3月末日 | 勤続3年以上かつ45歳以上のMR | 割り増し退職金 最大36カ月分 |
武田薬品工業 | 非公開 | 2021 | 非公開 | 42歳以上の管理部門(非営業) | |
エーザイ | 150名 | 2021 | 3月末 | 平成30年4月1日現在、在籍する45歳以上かつ勤続5年以上の社員 | 3年連続 早期退職の最終年 |
イーライ・リリー | 全営業の1割(150人超) | 2020 | 12月末 | 35歳以上の営業部門 | |
エーザイ | 148名 | 2020 | 3月末 | 平成30年4月1日現在、在籍する45歳以上かつ勤続5年以上の社員 | 3年連続 早期退職の2年目 |
ノバルティス | 非開示 | 2020 | 非開示 | オンコロジー部門 | |
武田薬品工業 | 非公開 | 2020 | 11月末 | 30歳以上/勤続年数が3年以上(定年後再雇用者含む)の国内ビジネス部門 (ジャパン ファーマ ビジネス ユニット、日本オンコロジー事業部)所属社員 |
多くの製薬会社がMRの早期退職を募集していることがわかりますが、これは本当にMRの需要が減っているのでしょうか?私の考えでは、そうではなく、MRの役割やスキルが変化しているということです。コロナ禍によって、MRはリモートでの情報提供やデジタルツールの活用が必須となりました。また、医師や薬剤師のニーズも多様化し、単に医薬品の特徴や効果を伝えるだけではなく、疾患の最新の知見や治療ガイドライン、患者のQOL(生活の質)の向上など、より高度な情報を求められるようになりました。さらに、医療制度の改革やジェネリック医薬品の普及によって、MRは医薬品の価値を証明するためのエビデンス(科学的根拠)の提供や、医療費の削減に貢献するための提案力が必要とされるようになりました。
つまり、MRは単なる営業マンではなく、医療現場のパートナーとして、医療の質の向上に貢献する専門家としての役割が求められているのです。そのため、製薬会社はMRの質の向上や効率化を図るために、早期退職を募集し、新たな人材や組織を採用・再編するという戦略をとっているのだと思います。これは、MRのリストラではなく、MRのリニューアルと言えるでしょう。
対応策
MRとして生き残るためには、どのような対策が必要でしょうか?私は、以下の3つのポイントを挙げたいと思います。
- リモートでの情報提供スキルの向上 コロナ禍が収束したとしても、リモートでの情報提供は今後も続くと考えられます。そのため、MRはオンラインでのコミュニケーションスキルやデジタルツールの活用スキルを身につける必要があります。例えば、オンラインでのプレゼンテーションでは、画面の見せ方や声のトーン、話し方のスピードなどに気を付けることが重要です。また、デジタルツールでは、医師や薬剤師にとって有益な情報を効果的に伝えるためのアプリやウェブサイトなどを活用することが必要です。
- 高度な医薬品情報の習得 MRは医薬品の情報を提供するだけでなく、医療現場のニーズに応えることができるかどうかが問われます。そのため、MRは医薬品の特徴や効果だけでなく、疾患の最新の知見や治療ガイドライン、医療制度の動向など、幅広い医薬品情報を習得する必要があります。また、医薬品の価値を証明するためのエビデンスの理解や分析力も必要です。MRは、医師や薬剤師と対等に議論できるレベルの知識を身につけることが求められます。
- 医療費の削減に貢献する提案力の強化 MRは医療費の削減に貢献することができるかどうかが問われます。そのため、MRは医薬品のコストパフォーマンスや患者のQOLの向上など、医療費の削減につながる提案をすることが必要です。例えば、医薬品の適正な使用や用量・用法の最適化、副作用の予防や管理、ジェネリック医薬品の切り替えなどの提案をすることができます。MRは、医療費の削減に関するデータや事例を用いて、医師や薬剤師に説得力のある提案をすることが求められます。
以上が、私の見解と対策です。MRのリストラは深刻な問題ですが、それはMRの役割やスキルが変化しているということでもあります。MRは、時代の変化に対応し、医療現場のパートナーとして、医療の質の向上に貢献する専門家としての自覚と能力を高めることが必要です。私は、MRとしての経験を活かし、ブロガーとして、MRの皆さんに有益な情報をお届けしたいと思います。今後とも、私のブログをよろしくお願いします。
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