ヤンセンファーマが日本国内で2029年までに50件の新薬承認を目指すというのは、単に目標設定というより、実際に多額の投資を伴う計画です。2023年現在、日本国内の医薬品市場は約10兆円規模に達し、ここでトップ3に入ることは、シェアを10%以上確保する必要があるでしょう。現在、ファイザーや第一三共などが上位に位置していますが、ヤンセンファーマは特にオンコロジー(がん)領域でのシェア拡大を狙い、その領域で市場規模を約5000億円と見積もっていることが分かります。
1. 国内市場トップ3入りの背景と数字
現在の医薬品業界トップの製薬企業として、武田薬品がシェア約10%を誇り、第一三共や中外製薬がそれに続きます。ヤンセンファーマがこれらの企業と競合するためには、少なくとも国内市場で10%のシェアを達成する必要があり、これは数千億円規模の売上を意味します。特にがん治療分野での強みを活かし、今後の新薬承認とともに、さらなる売上拡大を見込んでいます。2029年までに新規承認50件という数字は、同社の強い成長意欲を反映しています。
2. MRの数と変化
MR(医薬情報担当者)の数についても具体的に言及することができます。2015年のピーク時には、製薬業界全体で約6万人のMRが存在していましたが、近年のデジタル化やリストラによって、この数は約4万人に減少しています。特に、デジタル営業が進むにつれて、多くの製薬会社はMRの削減に動いてきました。しかし、ヤンセンファーマはこれに逆行し、営業人員を増加させる戦略を取っています。ヤンセンファーマの増員計画では、2024年までにMRの人数を現在の約10%増やす計画があり、これは他社にない積極的な姿勢を示しています。
3. MRリストラの影響と反転
過去10年間で、製薬業界は大規模なMRリストラを実施してきました。たとえば、武田薬品は過去に数千人規模のリストラを行い、MRの数を縮小してきました。同様に、中外製薬もデジタル営業にシフトし、対面でのMRの役割を縮小させています。しかし、ヤンセンファーマは、特にがん領域において、MRが医療従事者との直接的な関係を築くことが依然として重要だと判断しています。このため、2024年以降もMRのリストラではなく、逆に営業部門の拡大に取り組んでいるのです。
4. ヤンセンファーマのオンコロジー領域での成長
ヤンセンファーマが特に注力しているのが、がん治療薬の開発とその市場拡大です。がん治療薬の市場規模は2023年時点で約5000億円に達しており、これが今後数年間でさらに拡大する見通しです。ヤンセンファーマは、免疫療法や新しい分子標的薬などの開発を通じて、この急成長市場での競争力を高めています。2029年までの新規承認50件のうち、多くががん治療薬に関連しており、これが同社の国内市場での地位向上に直結しています。
5. MRの未来―新たな営業スタイルと役割
MRは今後も、デジタル営業と対面営業の両方を駆使するハイブリッドな営業スタイルへと進化していくでしょう。特に、がん治療薬のように高度な知識が必要な製品では、MRが専門的な情報を提供し、医師との密接な関係を構築することが重要です。このため、MRの教育や研修がより専門的な内容へと進化し、特定の領域に特化したMRの育成が進められると予想されます。
現在、製薬業界全体でデジタルツールを活用した営業活動が進んでいますが、ヤンセンファーマはMRの対面活動を補完する形でデジタルツールを活用し、医療従事者へのアプローチを多角的に進める方針です。MRの増員と質の向上は、同社が成長戦略を実現するための重要なカギとなります。
ヤンセンファーマの国内市場におけるトップ3入りへの挑戦は、積極的な営業戦略、特にMRの役割強化と新規承認を支える体制強化によって進められています。市場シェアの拡大と新薬承認の進展により、今後も注目される企業であり、他の製薬企業とは一線を画す成長戦略が展開されることでしょう。
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